だって、キミが好きだから。


……そっか。


それも忘れちまったんだな。


ズキンと胸が痛む。


あの時、映画の結末に泣いてた菜花の顔が頭に浮かんで余計に胸が締め付けられた。



「いいなー、観たかったなー!泣いた?」



無邪気に笑って訊ねて来る菜花の隣に並んで座る。


肩と肩がぶつかり合うと、菜花の体がビクッと揺れた。



「泣いてねーよ。俺が泣くわけねーだろ」



「そ、そっか!そうだよね。琉衣は強いもんね!あたしが観たら泣いちゃうかも」



ああ。


お前は泣いてたよ。


最後にヒロインが死ぬなんて、悲しすぎるって言ってな。


マジで……覚えてねーんだ。


忘れちまったんだ。


頼むから思い出せよ、なんてことは絶対に言えない。


菜花が傷付くのを知ってるから。


傷付くのは俺だけでいい。


菜花が笑ってくれてたらそれでいい。


自分の拳を力いっぱい握り締めた。


爪が皮膚に食い込んですっげえ痛い。


だけど……菜花の心の方がもっと痛いはずで。


無邪気に笑う顔を見てたら、なぜか泣きそうになった。



「琉衣……?ごめんね。あたし、また変なこと言った?」



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