だって、キミが好きだから。
こいつは俺の心臓を何回壊せば気が済むんだよ。
やべえ、さすがにもう限界だ。
うつむく菜花のアゴに手を当てて上を向かせる。
潤んだ瞳がやけに色っぽくて、自分の中で必死にせき止めていたモノが溢れ出した。
「る、琉衣……っ?んっ」
キスをした途端、菜花が固まった。
けど、そんな菜花を気にしている余裕はねー。
ただただ、俺は菜花の小さな唇にキスを繰り返した。
「んんっ……る、い。好き……」
唇が離れた瞬間、菜花が甘い声で囁く。
最初は強張っていた体も、今では俺の背中に腕を回してギュッと抱きついている。
この体勢でんなこと言うなよ。
こいつはマジで……。
俺を煽るのがうまい。
「えへへっ」
「なに笑ってんだよ、バカ」
普通、んな時に笑うか?
こっちは必死でガマンしてるっつーのに、人の気も知らねーで。
けど、菜花の笑顔を見てたら許せてしまう。
マジで菜花バカだな、俺。
「ファーストキスだなって考えたら、なんだか恥ずかしくなっちゃって」
菜花の無邪気な笑顔が、今は胸に突き刺さった。
ナイフで突き刺されたかのように、ズキズキと激しく痛む。
ファースト……キス、か。
前にキスしたことを………そうか。
忘れたのか。
忘れた……。
忘れ……っ。
俺との間に起こったことを忘れていったら、この先どうなるのかなんて考えたくねー。
今は……今だけは考えたくねーよ。
言いようのない気持ちが込み上げて、泣きたくもねーのに涙が溢れて来る。