だって、キミが好きだから。


家に帰って家族会議が行われる中でも、あたしはぼんやりしていた。


早い方がいいということで、あたしの手術はどうやら7月末に決まったらしい。


入院は後遺症の有無や程度によって長くて3ヶ月、短くて1ヶ月程度とのこと。


もし……失敗しちゃったら。


あたしは死ぬかもしれない。


そうなった時のことは考えたくもない。



「菜花、聞いてるの?」



「え?あ、ごめん。なに?」



お母さんに言われてハッとする。



「ちゃんと考えよう?菜花のことなんだから」



「考えるって、何を?手術するんでしょ?それ以外に選択肢はないじゃん」



もし大きな血管が傷付いたら出血が止まらなくなって死ぬけど、それは20%ほどの確率だって言われた。


神の手を持つ先生が北海道の病院にはいるらしい。


だけど20%って結構な確率だと思う。


5分の1の確率だよ?


怖いよ。



「そ、それはそうだけど。これからの生活のこととか、学校のこととか色々あるでしょ?」



「色々って?」



「先生がね……脳を触ることで、日常生活にも支障を来すようになるかもしれないって。脳は一度ダメージを受けると回復しないんだって」



お母さんはたちまち目に涙を浮かべて、手でそれを拭った。


悲しそうに顔を歪めて泣くお母さんの隣で、お父さんが優しくお母さんの肩を抱く。


お母さんやお父さんの中には、20%の可能性は頭にないみたい。


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