だって、キミが好きだから。
「行くぞ」
ーーガラガラ
色々考えている内に朔真君はラーメン屋さんの引き戸を開けた。
「「いらっしゃいませー」」
中から従業員の威勢の良い声が聞こえて来る。
戸惑うあたしの腕を引いて、朔真君はどんどん中に進んだ。
スープのいい匂いがして、思わずゴクリと唾を飲み込む。
食欲なんてないし食べれる気もしないけど、匂いを嗅ぐと食べれる気がして来るんだから不思議だ。
さっきまで……暗闇のどん底にいたはずなのにね。
「おー、いたいた!琉衣斗〜!」
え!?
店員さんに席に案内されている途中、朔真君が大きく手を振り始めたので思わずそこに目を向けた。
そこには従業員の格好をしてお客さんの注文を取る琉衣の姿があった。
「な、なんで?」
「なんでって、琉衣斗はここでバイトしてるから」
「え?あ、そうだったんだ」
っていうか、どんな顔をして会えばいいのかわからない。