だって、キミが好きだから。
どうしよう。
今すぐにでも帰りたい気分だよ。
案内された席に着いて、琉衣の方を見ないようにした。
だけど、ひしひしと感じる視線。
「お、こっちに来た」
朔真君が人の気も知らないで嬉しそうにそんなことを言うから、あたしは余計に顔を上げられなくなった。
緊張してドクンドクンと鼓動が鳴る。
琉衣、ごめんね。
ホントにごめん。
傷付けてごめんね。
「何してんだよ?つーか、なんでお前らが一緒にいるわけ?」
怒っているような、スネたような琉衣の声が聞こえる。
「偶然会ったんだよ。な?」
「え……あ、う、うん」
「なんでそんなによそよそしいんだよー。それより何食う?あ、来てやったんだからサービスしろよなー」
朔真君の無邪気な声が聞こえる。
あたしは恐る恐る顔を上げた。
でも、琉衣の方は見れなくて。
テーブルの上のコップを見ていた。
「偶然、ね。朔真にだけはサービスしてやんねーし」
「おいおい!俺がなのちゃんと来たからって、スネるなよ」
「スネてねーよ。あと10分で終わるから、それまで待ってろよな」
頭にポンと乗せられた手のひらと、朔真君と話す時とは違う優しい口調。
ひどいことをしたのに、どうしてこんなに優しいの?
その優しさに泣きそうになった。