だって、キミが好きだから。


「どうしたんだよ、ボーッとして」



「えっ……!?」



昼休み、あたしたちは2人で中庭の桜の木のそばにあるベンチで過ごしていた。


隣に座っている琉衣が、お弁当を食べる手を止めているあたしを見て首を傾げている。



7月のちょうど半ば。


辺りには蝉の鳴き声が響き渡っていた。



「ボーッとしてんなよ」



頭をポンと小突かれ、眉を下げた悲しそうな笑顔で琉衣はあたしの顔を覗き込む。



もう何度見たかわからない琉衣のこんな顔。


見るたびに悲しくなって泣きたくなる。


胸が締め付けられて苦しい。



「……ごめんね」



そんな顔をさせてしまっていること。


心から笑って欲しいのに、あたしといるせいで琉衣は笑えなくなってしまった。


< 298 / 343 >

この作品をシェア

pagetop