だって、キミが好きだから。
住宅街の中にある菜花の家の前まで来た時、昨日まであった表札が消えていたことに気付いて首を傾げる。
何気なく様子をうかがってみると、リビングの電気がついていないどころか人の気配もしない。
出かけてんのか……?
そう思いながらもインターホンを押した。
だけど、誰かが出る気配はない。
不気味なくらいシーンとしていて、異様な空気を放っていた。
「あんた、北上さんの家に毎日来てた子だね」
後ろから突然声をかけられて慌てて振り返る。
そこにいたのは、菜花んちの隣に住んでいるばあさんだった。
たまにすれ違ったりするから顔は知っていたけど、話すのはこれが初めてだ。
「北上さんなら、今日の朝に引っ越して行ったよ」
は?
引っ越し……?