だって、キミが好きだから。
「矢沢琉衣斗です。これから4週間お世話になります。どうぞ厳しく指導してやって下さい、よろしくお願いします」
今日から俺は、最も学びたかった脳外科の研修に入る。
今までとは違い、やる気が体の奥底からみなぎって来る。
脳は解明されていないことがまだまだ多いけど、ここで俺は出来る限りのことを学びたいと思っている。
「矢沢君だね。僕は指導医の成瀬(なるせ)だ。よろしく頼むよ」
成瀬先生は笑顔が素敵なダンディーなおじさんだった。
優しそうに見えるけど、外科医は変わり者が多いと聞くしちょっと不安だ。
けど、泣き言は言わねー。
どんなことにも耐えてみせる。
田舎の中にひっそり建っているこの病院は、脳外の他にも循環器や呼吸器がある。
病床数は200人程度と中堅クラスの病院だ。
だからなのか、大学病院みたいな忙しさはない。
それでも、救命の研修医は忙しそうだけどな。