だって、キミが好きだから。


「ここのナースはみんな元気だから、負けないようにな」



「はい」



成瀬先生は苦笑したあと再び歩き出した。


最近の病院はどこもそうだけど、プライバシーの関係で病室の前にネームプレートは貼られていない。



「ここだよ、個室なんだ」



ーーコンコン



ノックしたあと、引き戸を引いて成瀬先生が中に入った。


俺もそのあとに続く。



綺麗な個室の部屋の中には、ベッドに横たわる女性の姿があった。



遠目だからよく見えないけど、寝ているのかドアが開いてもその女性はピクリとも動かない。



心電図モニターや中心静脈栄養といって、鎖骨にある太い静脈からルートが垂れている。



「寝てるんすかね?」



だったら、出直した方がいいんじゃ……?


近寄りながら成瀬先生の背中に問いかける。


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