だって、キミが好きだから。


けどさ。


目が覚めたら、全力でお前を奪いに行ってやる。


俺は菜花の頬に手を当てたまま、そっとその小さな唇に自分の唇を押し当てた。



懐かしい唇の感触が、俺の胸をひどく締め付ける。




知ってるか?


お姫様は王子のキスで目を覚ますって。


昔話が大好きだったお前なら、絶対にこれで目を覚ますはずだよな?



首元にキラッと光る何かを見つけた俺は、恐る恐るそれに手を伸ばした。



チェーンの先に繋がっていたのは、遠い昔に俺があげたシルバーの指輪。



こんな安物を……ずっと大切に持っててくれたんだな。


あの時誓ったことを俺は忘れてねー。


必ず一人前になって、菜花を迎えに行こうと決めていた。



一人前になって立派になるまで、左手の薬指は予約しとくっつっただろ?


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