だって、キミが好きだから。
これは夢なんかじゃねー。
触れている手の温もりは紛れもなく本物で、菜花の声もあの頃とまるっきり同じだ。
大好きでたまらなかった菜花がここにいる。
「ここは……どこなんですか?あたし、どうしてここにいるの?」
「ここは病院だ。事故に遭って、そんでずっと目を覚まさなくて……っ」
言っている途中で熱いものが喉まで込み上げて来た。
幻なんかじゃねー。
本物の菜花が目の前にいる。
嬉しいやら悲しいやら、よくわからない感情が込み上げた。
必死に涙を堪えて、顔の筋肉に力を入れる。
泣くなんて、みっともねー姿を見せられるかよ。
「事故……?あたしが?そんな」
「もう大丈夫だ。俺がいるだろ?」
俺は菜花の頬に手を伸ばして優しく触れた。
菜花は目を見開いてビックリしていたけど、何も言っては来ない。
それどころか、頬を赤くして俺を見つめて来る。
「えっと。あなたは……あたしの先生?」
「半分正解。けど、先生で終わらせる気はねーよ」
「?」
意味がわからないと言いたげに、菜花は小さく首を傾げた。