だって、キミが好きだから。
はぁ。
なんでこんなにあいつのことが頭から離れねーんだよ。
あいつの笑顔を思い出してドキドキと心臓が音を立てる。
夜も寝れねーとか、中学生かってんだよ。
くそっ。
「あ、お、おはよう……っ!」
トイレから出た時、同じタイミングで女子トイレから出て来た菜花に遭遇した。
背中まで伸びたサラサラの栗色の髪と、体操服のジャージ姿の菜花にドキッとする。
色白すぎだろ。
小さいし、頬は綺麗なピンクだし。
……可愛いな。
なんて。
思ってねーし。
「この前は本当にありがとう」
菜花に声をかけてもらえて、嬉しいと思ってる俺がいる。
ニコッと微笑まれて、心が温かくなった。
バカかよ。
たかが笑いかけただけだろ。
それなのに、なんで照れるんだよ。
「いや……別に」
「あれ?なんだか機嫌悪い?前はもっと笑ってくれたのに」
そう言いながら、菜花が顔を覗き込んで来た。
チビのくせに、必死に俺を見上げている。
潤んだような綺麗な瞳に、鼓動がドキッと大きく跳ねた。
やめろよ。
そんな目で見るんじゃねー。
おかしくなっちまうだろーが。
「体育だろ?早く行けよ。じゃあな」
顔をそらして菜花の横を通り過ぎる。
赤くなった顔を見られたくねー。
「じゃ、じゃあ……またね」