だって、キミが好きだから。
その日の夜。
久しぶりにあの日の夢を見た。
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ーーミーンミンミン
ーーミーンミンミンミンミン
ピリピリ張り詰めた空気が漂うそこには、蝉の鳴き声だけが響き渡っていた。
真っ白な室内に、鼻をつく独特な消毒液の匂い。
「見て下さい、これが頭痛の原因になってる脳腫瘍です」
どれくらい経ってからだろう。
目の前に座る人がそう囁いたのは。
え?
はい?
脳腫瘍……?
なにそれ。
そんな話を聞くために、今日来たわけじゃないんですけど。
意味がわからないよ。
最近良く頭痛がするから、ただ痛み止めを処方してもらうためだけに来たのに。
思わずポカンとする。
「そ、それって……ガンってことですか?」
どうやらお母さんは、先生の言葉の意味を理解したらしい。
隣で涙を浮かべている。
ガン……?
何言ってんの?
お母さん、頭大丈夫?