だって、キミが好きだから。


先生は数日前に撮ったCTとMRIの画像をパソコンに映して、あたしとお母さんに見せて説明を始める。



「良性腫瘍なのか悪性腫瘍なのかは、まだわかりません。大きな専門病院を紹介しますので、検査入院をオススメします。紹介状を書いておきますから、出来るだけ早く受診して下さい」



わけがわからないまま先生の話を聞き、あたしは混乱するばかり。



悪性?


良性?



大きな病院って?


検査入院ってなに?



そんな疑問がたくさん浮かんだのに、ひとことも言い返せなかった。



うそだ。


何かの間違いだよ。


そんなはずはない。


ありえない。




……ありえない。


ありえないよっ!


そう思うのに体は震えていた。


目の前が真っ暗な闇に覆われて、生きている心地がしない。


きっと頭が真っ白になるってこういうことを言うんだ。


お母さんに腕を引かれて診察室を出たあとも、ずっとずっと先生の言葉が頭から離れなくて。


うそだ。


何かの間違いだって。


うわごとのようにそう繰り返していた。


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