初恋の行く末
「そう言えば友美から聞いたけど小林おまえ彼女できたんだって」
話題を変えて聞きたかった本題に移る。
アイツは大学時代、合コン三昧で女と付き合うというよりは一夜を共にするだけという感じだった。
けっこう綺麗な子が多くてなんで付き合わないのか?と聞いたらタイプじゃないといつも答えてた。
もったいないなと思ってたんだよな。
社会人になったら仕事が多忙という事と男性ばかりの職場で出会いがないとぼやいていたけど小林気付いてないだけで、もてるんだよな女に。
そんな小林の彼女はどんな子なんだ?
興味津々で聞いた。
「あぁ、高橋も知ってるだろう?山中美保子。おまえ中学時代一緒だったんだろう?」
え!?
山中もしかして二股!?
俺友達の彼女に手をだしたのか?
まずいだろう!!それはさすがに!!
「はぁ!?」
俺は動揺を隠せなかった。
「え!!いつから?付き合いだしたのって」
と小林に質問した。
どうやって知り合いになったんだ?
いつから2人は付き合ってた?
「半年くらい前からかな?ここのスナックで知り合って」
そう言った。
半年前といったら俺が山中と出会った頃くらいか?
だとしたら同時進行じゃないか!!
2人はどの程度の付き合いなんだ?
「おまえ山中と結婚するの?」
気になってこう聞いてた。
「するよ。多分。美保子も妊娠してるんだ」
驚いて思わず飲んでいたハイボールを吹き出し咳き込んでしまった。
おい!山中もか!
可能性としては低いけど、まさか俺の子じゃないだろうな?
毎回着けてたし大丈夫だと思うが不安になった。
「なんか小林ちょっと会わない間に急展開だな!!驚きすぎたわ今日」
汚れたテーブルを吹きながら言った。
「驚きついでにさ確認したいんだけどさ俺高橋と美保子がラブホテルの近くにいたの見たんだけど二人行ってた?」
ヤバい!!見られてた!
でも決定的瞬間を見られてなくて安心した。
バレないように顔色一つ変えず小林に言う。
「ラブホテル?何かの間違いじゃない?」
と否定した。
「俺街中で見かけたのと今日偶然ホテル近くのコンビニにいたの見たんだけど」
小林はこう言ってきた。
俺は必死に誤魔化す理由を考えた。
当時の状況を思いだしながら
「あぁ~実は山中に一度だけ会ったよ。美容院で偶然会って連絡先交換したけど小林が思ってるような密会じゃないし」
うまくごまかせ!!俺!
そう言ったら小林は納得がいかないようで問い詰められたので
「小林誤解するなよ。実は山中にカフェに呼び出されて告白された。でも俺には友美がいるし断ったら号泣してさ大変だったんだ」
と言った。
脚色はしたが、まったくの嘘ではない。
「ラブホテルで?」
小林は疑って聞いてきたので
「だから!それも違う!カラオケボックス行ったのは。ついでにコンビニで見かけたのは近くの産婦人科に用があったの。産婦人科」
バレないように必死に語尾を強めて言い更に
「俺は友美が好きなの!山中は俺にとって兄弟、妹みたいなもん。妹を抱けないだろう?」
こう付け足した。
「本当にそうなのか?」
あまりにしつこく聞いてきたので
「お前しっこいよ!山中はタイプじゃないから」
と若干切れて見せた。
多分これで信じてくれただろう。
ラブホテルの近くには確か大きな産婦人科があったはずだ。
前に友美とドライブ中に、この産婦人科の話題が出たから大丈夫だ。
「ごめん。高橋、俺嫉妬して」
と小林は謝ってきた。
「いいよ。俺も悪かった。お前相当、山中に惚れてんだな」
良かった。
小林信じてくれた。
「うん。久々こんな感じ。」
と小林は真剣な眼差しでこう言った。
その様子を見て安心した。
俺は山中と人生を共にする事はできないし、そろそろ別れを切り出さないといけないと思っていた。
だから山中が小林と付き合っていると聞いて驚いたけど同時に良かったと思った。
小林なら根が真面目だし優しいし多分この様子だと彼女一筋で浮気はしなそうだ。
安心して任せられる。
それに友達の彼女なら近況も年賀状とか小林からの話で知れるから嬉しい。
彼女が幸せだったら嬉しいし辛そうなら、もしかしたら助けられる事もあるかも知れない。
「良かったな!!でいつ生まれるの?」
彼女の妊娠時期が気になって聞いた。
「今2周目って言ってたからあと10か月後?」
安心した。俺の子じゃない
「じゃあ今日は二人親父になる事を祝福して乾杯しよう!今日ここ俺奢るよ」
"山中幸せになれよ"
と心の中で祈った。