偽悪役者
「おはよう。」


「お、おはよう…!」



「体調はどうだ。」


「おはようございます。もう大丈夫です。」



次の日静音が出勤すると、橘は見るからに挙動不審で、来栖には珍しく体調の心配をされた。



「おはよー。ペテン師夜鷹ってセンスないわよね。私ならもっと良い名前つけるわ。一晩考えたんだけどね、玉幸とかどう?」


「玉に幸せって…それの方がどうかと思うッス。さすがKY先輩。」



挨拶ついでにデリケートな話を振り、しかも一晩考えた割には、玉幸(タマユキ)という安直な名前に、轢夲らしいと羮芻は思う。



「名乗った覚え無いんだけどー?」


「い、痛い痛いっ!褒めたんスけど~」



いつもの余計な一言により、羮芻は轢夲の鉄拳制裁を食らっていた。



「聞いたんですか。」



「昨日ね。」


「篠宮さんと要さんから聞きました。何というか、その…」



「おはよう、柊!今日も1日頑張ろう!」



じゃれあっている(ように見える)轢夲と羮芻を横目に、静音の問いに答える幡牛と遁苺、更には元気良く椎名が出勤してきた。



皆、静音のことを気遣っているのだが、なにぶんあからさま過ぎる。
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