偽悪役者
「どこに行くの?」


「静かに話せる場所。着いてからのお楽しみ。」



静音は玲斗の車の中にいた。


先回り出来るように行き先を聞こうとしたのだが、はぐらかされてしまった。



「ここは…」


「大丈夫だから入って。」



玲斗が静音を連れて来た場所。


懐かしい、けれど因縁の場所。



都立詠継祇ヶ丘小学校だった。



「屋上、入っていいの?」


「医院長の知り合いが、今の校長と知り合いでさ。見たいって行ったら話つけてくれた。」



中学校は5年前建て替えられたが、小学校は16年前。


だから、見渡す校庭、上がる階段、覗く教室、少し寂れたかもしれないが、そのどれも変わらないように感じた。



「学校って、見たいって言って見れるもんなんですか?しかも夜。」


「さあな。親交度によるだろ。」



「ですが、話をするのにわざわざ学校の屋上というのは…」


「確かに大袈裟だな。」



橘の疑問は最もだが、来栖には答えようがない。


ただ、話をしに来たにしてはと思う椎名と篠宮の見解は一致した。



会話から屋上に向かっていることは確かなので、篠宮達は校内を見回りながら進んだ。
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