偽悪役者
「ごめん。私さ、玲斗が犯人だと思ってた。同窓会で追っかけて来たし、診療所にも誘うし。岨聚が目覚めた後のこと、気にしてなかったみたいだったから。」



椎名に玲斗がもしかしたらと問われた時、我を忘れたのはこのせいだ。


静音ももしかしたらと、心の奥底で疑っていた。



疑っていたからこそ、晴らしたくて探っていたのだが。



「じゃ、プロポーズ断ったのも、僕が犯人だと思ってたから?」


「ううん、それは違う。母さんと、莉央にぃと深緒ねぇのことがあったから。気持ちはそっちにいってたし、今考えても玲斗はやっぱり友達。」



「そっか。」



友達と言い切る静音に、本当に無理なのだと悟った。



「柊!そろそろ。」


「分かりました。」



仁科が静音を呼ぶ。


後処理も終わったらしい。



「玲斗、さっき鏡鵺と3人で話したこと全部、また話してくれる?」


「分かった。」



盗聴機で筒抜けとはいえ、調書は取らなくてはならない。


面倒な杓子定規であるが致し方ない。



「静音。」


「うん?」



車に向かおうとして、何故か踵を返した玲斗。


不思議な顔の静音を軽く抱き締める。
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