偽悪役者
「ヤクシサン」


「課長に報告してきたからな。楽しみにしとけ。」



ビビるあまり片言になる卍擽へ追い打ちをかけるの如く、厄塒はニヤリと不気味に笑みを浮かべる。



「はーい、皆さん!恒例、幡牛さんからでーす!」



「待ってましたっ!」


「少しは自重しろ。」



遁苺の言葉に目を輝かせる橘は、呆れる来栖さえ気にしない。



「これ…蒸しパンっスか?」


「なんか段々凝ってません?」


差し出されたお盆の上にはカラフルな色の蒸しパンが並ぶ。



「作るの大変でしょう?」


「そんなこと無いわよー。混ぜて蒸すだけだから。」



バリエーションに驚く椎名だが、幡牛は作り慣れているのか簡単に言う。



「頂こうかな。」


「係長にはこれを。栄養満点のほうれん草です。」



夜食というには物足りないかもしれないが、胃に負担をかけない食材ばかり。



「このピンク貰いまーす!」


「私はこの黒々としたのにしようかしら。」



橘は苺を、轢夲は黒糖を。



「じゃ俺は小豆を貰おう。」


「僕はこのレーズンを。仁科君にも持って行ってくるよ。」



篠宮と要もそれぞれ手に取る。
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