偽悪役者
「イエロー貰うっス。」


「俺、定番貰います。」



羮芻はバナナ、来栖はさつまいもを。



「私は白色にしよっと。」



「この朱色、美味そう。」


「オレンジも美味そうだぞ。」



遁苺はヨーグルトを、卍擽はニンジンを、厄塒はカボチャを。


仕事をしながら作ったとは思えない程、プロ級の見た目と味に皆舌鼓を打つ。



「……………………。」



皆がワイワイと話している声が遠い。


静音は心ここにあらずといった感じでボーと見ていた。



頭の中でループしている言葉。


さっき玲斗から言われた言葉。



「柊さんも食べなさいな。ほら、きなこ。食べてみて。」



静音の頬に微かに流れる涙に気付かないのか、幡牛は明るく勧めた。



「…ありがとうございます。」



頬張ると口に広がるきなこの優しい味。


ここに居る人達みたいだと思う。



手を伸ばせばそこにある幸せを掴む勇気と、自ら狭めた幅を広げ生きる覚悟。




玲斗の言葉に、もう一度だけ自分を信じよう。







『もう気持ち偽らないでいい。大丈夫、僕が保証するから。』






やるべき事と、やりたい事を決めた。
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