偽悪役者
それから二週間後……


事件というか事故というか…、ここ4ヶ月に起きた一連の事が解決した岨聚の病室にて。



「岨聚、何か食べたいものある?」



「う~ん…ないわ。お水をくれる?」


「はい。」



雅と琅提は、この5日前に目覚めた岨聚の見舞いに来ていた。


精密検査の結果も良好で、岨聚は明後日退院だ。



ただ、事の顛末について岨聚は全て知っているのに何も言わなかった。



仁科と厄塒が来た時は覚えていない、そして今現在も一言も話題にしていない。



まるで、16年前の静音のように。



「岨聚!見舞いに来たよ。」


「……よっ!」



「玲斗!………と、鏡鵺。よく顔を見せれたものね。」



病室に顔を出した玲斗と鏡鵺に、嬉しい顔の後に呆れた顔をした。



あれだけ騒いでいた総帥があっさり被害届を取り下げたのは、目覚めた岨聚が総帥を言い含めたからとか。


そのおかげで鏡鵺は罪にも問われることなく、こうしていられるのだ。



「………静音…」



玲斗と鏡鵺の後ろから入って来た静音に岨聚は驚く。



顔を合わせるのは同窓会以来、岨聚が静音の名を最後に呼んだのはもっと前だ。
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