偽悪役者
「ね、柊!」


「…気持ち悪いウインクは止めてくださいよ。他を当たってください。あ、シノさんおはようございまーす!」


「おはよう。なんだ、またフラれたか。そうかそうか、それは何よりだ。」



椎名の背を叩きながら、慰めになっていない慰めをするのはシノさんこと、篠宮(シノミヤ)巡査部長59歳。


柊とは旧知の仲で、父親代わりの様な存在だ。



「要、朗報だ。今日も椎名はフラれたぞ。」


「先輩。そうですか!それは嬉しい限りです。」



部屋に入るなり篠宮が声をかけたのは、2係の主任である要(カナメ)警部補48歳。


篠宮とは所轄時代の先輩後輩であり柊の父親代わりも自称していて、それもかなりの溺愛ぶりなので、フラれることが嬉しいようだ。



「みんなで馬鹿にしなくったって………」


「日頃の行いよ。ザマァみなさい。」



「口が悪いッスよ。だから、彼氏が出来ない」


「なんですって?!」


「い、いえ…」



自他共に認めるドSの轢夲(キシモト)32歳と、一言多くていつも被害を被る不運な男羮芻(コマグサ)29歳。


2人は元科学捜査研究所の研究員で、2係の通信機器担当である。
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