偽悪役者
「篠宮さん、その子、児童支援施設に引き継ぎですよね。この様子じゃ長引きそうですね。」


「ああ。引き継ぐ前に何とかしたいんだけどな。さて、どうしたもんか。」



交代した警察官も気になるようだ。


仮眠室の脇にある長椅子に座る静音の前に、篠宮はしゃがみこむ。



「名前は何て言うんだ?」


「………。」



「今何歳だ?」


「………。」



「あの2人となんで一緒にいたんだ?」


「………。」



「お父さんとお母さん、心配してると思うんだが。家の電話番号教えてくれないか?」


「………。」



「おじさんが怖いか?」


「………怖くない。」



「!そうか。それは良かった。初めて会う人にはいつも言われるんだ。おじさんの奥さんだった人にも最初言われてな。赤ん坊にも泣かれることが多くて、君のことも怖がらせてるのかと思ってたんだが。そうじゃなくて良かった。」



12年後には柔和になっているが、この頃の篠宮は『優しい交番のお巡りさん』というには少し無理のある顔立ち。



だが、怖くないと言われたことが嬉しかった。


保護してから初めて話してくれたことも、更に嬉しかった。
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