偽悪役者
脅迫状は、血文字ではなくパソコンで打った様な機械的な文字。


殺すなどといった文言も無く、届いているのは都澄が示した1枚だけである。



羮芻の言うように、脅迫状というよりはストーカーが贈るものに近い。



「まあ、そうなんだが…。届いた先が問題でな。氷室財閥のご令嬢なんだ。」



「本当ですか!?」


「それはそれは。」



要と篠宮が驚くのも無理はない。



氷室財閥は、知らない人はいないほどの資産家一族。


全国にかなりの土地を持っている地主であり、スーパーから百貨店といった日用品、医療や介護といった福祉、銀行や建設といった企業などを経営している実業家でもあるのだ。



そしてその令嬢、氷室岨聚(ヒムロ ソジュ)が、この脅迫状紛いの受け取り主である。



「総帥が騒いでな。被害届も出ているし、捜査しない訳にはいかなくなった。」



「圧力、ですか。」


「そんなところだ。」



察しが良い要でなくても分かる。


上層部が、権力者には良い顔をしたい、という身勝手を。



とはいっても、被害者に実害が出てからでは遅いので、現時点からの捜査開始は良いことなのは確かだ。
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