偽悪役者
「警護はどうしますか?」



岨聚は銀行の本部で支店の統括をしており、時々都内を回っている。



「今は四六時中誰かが張り付いているそうだが、それも限界がある。明日、中学校の同窓会が開かれるから、とりあえずそこで警護と捜査を兼ねた潜入を始める。」


「同窓会ですか?」



「詠継祇ヶ丘中学校ですよ。ご令嬢が都立って、なんだか腹立ちます。」



都立詠継祇ヶ丘(ヨツギガオカ)中学校は、ごくありふれた都立。


財閥とはいえ特別扱いはしないとの父親の意向らしいが、見下されているようで橘はいい気がしない。



「詠継祇ヶ丘中学……?」



篠宮には、その名前に覚えがあった。



「静音、お前の通ってた中学だったんじゃないか?」


「そうだ。確かそうだよな。すっかり忘れてた。どっかで聞いたことがある名前だと思ったんだ。」



篠宮の言葉に、思い出したようで要も頷く。



「そう…ですね。」


「どうかした?」



いつも明るく年下キャラ全開なのに、今まで口を挟むことも無く、しかも自分の中学のことであるにも関わらず話し掛けられても反応が薄い静音に、橘は尋ねながら不思議そうに首を傾げる。
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