偽悪役者
『今回の件、すまなかったな。色々口まで出して。』


「いえいえ。都澄さんの頼みですから。それに小物が大物になりましたからね。こちらとしてもお礼を言わなくては。」



裏取りと取り調べの合間をぬって、汀は都澄へ電話をかけていた。



組長はお飾りだったらしく、季更津と痴愚思の逮捕により蝶笂組は事実上解体、会鎌を含む蝶笂組が運営するキャバクラもガサ入れ後閉店に追い込まれた。



莉央と深緒の殺害と死体遺棄だけでなく、厄塒が睨んだ通り美人局や売春斡旋の余罪も含めた捜査を開始した。



『さすが、手際よく厳密に物事を遂行する汀原帥だ。』


「止めてくださいよ。今じゃ部下にまで言われる始末なんですから。」



名前をもじって都澄が付けた、あだ名のようなもの。


43歳にもなって恥ずかしいからあまり広まって欲しくないのだが、あだ名通りのきっちりとした仕事をする為、汀本人の知らぬところで有名になっている。



『柊は大丈夫か?』


「ええ。噂も落ち着きましたし、仲直りもしたみたいですしね。」


『そうか、それは良かった。実はな…』



今回の件で思い付いた都澄のある考えを、汀は流石だと同意した。
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