偽悪役者
課長という言葉に過敏に反応し、卍擽は早足に出ていった。


静音の情報を漏洩した件で課長に叱られてからというもの、卍擽は課長恐怖症だ。



「被害者の味方って……似合わないし、格好つけ過ぎですよ。」


「うるせぇ。…俺より先に出世しやがって。」


「課長から聞いたんですか。」



多大な情報提供と蝶笂組解体という功績から、静音は課長の推薦により巡査部長への昇進と本部2係への異動が決定した。



異動理由については、篠宮達から静音の実績を聞いた都澄が思い付いた考えに他ならない。



課長も、本部から声がかかり引っ張って貰えるなど光栄だと嬉しそうだった。



正式な辞令は後日だが、課長は厄塒には言ったようだ。



言わずもがな、卍擽の昇進は情報漏洩で相殺どころかマイナスの評価になったのは当然だろう。



「お仲間の弔いも済んだし、これで気兼ね無く本部勤務だな。知り合いがいるからって気を抜くなよ。」


「そんなこと、言われなくても分かってますよ。」



なんだかんだ言っても、嫌味だけで済んだのは、様々な悲しみを知っている人達だからだろうか。


厄塒達を見てきて、静音はそう感じたのだった。
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