一番がいい!!〜番外編〜
駅に着くと押し出されるように人が動く。
オレは、相川さんを守るように、肩を抱いてゆっくりとホームに降りた。
肩が上下に揺れている。
「どーしたの?
具合悪いの?」
顔を覗き込むと、真っ青だ…
オレが肩を支えているから、やっと歩けている状態…
「大丈夫… 大丈夫だから…」
力ない声…
「とにかく、ベンチに座ろう!」
ゆっくりと支えながら、ベンチに座らせた。
「ありがとう…」
口をハンカチに抑えて、下を向いている。
「どーしたの?」
相川さんの前にしゃがみ、ヒザに手を置く。
「… ちょっと、人に酔っちゃったみたい… でも、大丈夫だから…」
全然、大丈夫な顔してないから!
どーしたらいいんだろう…
オロオロするばかりで、何もできない…
「どーしたの?!」
ハッと横を向くと、慌てて近づいてくる高梨さんの姿があった。
「人に酔っちゃったみたいで…」
そんなことしか言えないなんて、情けねーな…
オレ…
「ごめんね…
大丈夫だから、行こっか!」
相川さんは、元気を装って立ち上がったが、ふらっとよろける。
慌てて抱き留め、ゆっくり座らせる。
相川さんの前に座り、
「その顔色じゃ無理だよ…
帰ろっか?
送ってくよ?」
慣れない浴衣姿で、慣れない満員電車に乗って…
なんで気付いてやれなかったんだろう…
相川さんがオレの胸に顔を埋めたのは、気分悪かったんだ…
あのとき気付いて、少し前の駅でも降りればよかったんだ…
唇を噛み締める…