一番がいい!!〜番外編〜
席に着くと
「ふぅー…」
後ろから、何かを決心してような息づかい。
「知里…
驚かずによく聞いてね…」
そんな深刻な口調で話すことか?
ちょっと笑いながら、その声に耳を傾ける。
「…あたしね…
翔平と付き合うことになったの…」
…………。
ん?
知里のことだから、また大声出して驚くかと思っていたけど、声が聞こえてこない。
不思議に思って振り返ると…
キョトンとした顔で、遊実の顔を見つめている。
「…遊実のお父さんが会社のお金使い込みがバレて、
お母さんが不倫の末、若い男と出て行って、
兄はニートで、弟は非行に走って、
病院には寝たきりのおばあさんがいて、
途方に暮れてるんじゃないの…?」
「はぁ?!」
遊実の声とは思えない、とんでもなく低い声。
オレは、知里の言葉に驚いて絶句…
「いやっ、あの…
昨日、余りにも暗い表情だったからね…
あの顔になるには、どんなことがあるのかって考えてて…
何を言われても受け止められる心の準備を…」
遊実のあまりの迫力の声に、目が泳いでシドロモドロになりながらも、一生懸命話してる。
次の瞬間、
「キャッハハッッ〜!!」
「アッハッハ〜」
「ブッ…クックッ…」
遊実と同時にオレも笑い出す。
知里の横を見ると、いつの間にか来ていた智哉も、口を抑えて肩を揺らして笑ってる。