その愛の終わりに
バタバタとお雪が部屋を出ていくと同時に、使用人が何人か部屋の前まで来たらしい。

ノックもそこそこに、義直の返事を待たず、数人なだれ込んできた。

そして床に倒れている美都子と、彼女の左頬にくっきりと残っている大きな手形を見て、事態を把握した。

はっきりとは口にしないが、しかし非難するような使用人達の眼差しを一身に浴びて、義直は美都子を抱き上げた。

意識が朦朧としている人間は、力が抜けきっているため大変重たい。

慎重に、しかし足早に寝室まで急ぐが、途中で使用人の一人が息を呑んだ。

「旦那様!血が!!」

咄嗟に振り返ると、廊下に点々と血が落ちていた。

廊下に差し込む月光のもと、美都子のネグリジェの臀部が血に染まり始めていた。

ぶわり、と冷や汗が流れる。

使用人を急かして寝室のドアを開かせ、ベッド寝かせた時には、美都子は眉をしかめ低く唸っていた。

おそらくお雪は、屋敷の外まで医者を呼びに行った。

近くに東雲家のお抱えの医者はいるが、今は夜中だ。

叩き起こしても、到着にはあと十五分はかかるだろう。

お雪を追いかけて医者を連れてくるよう命じ、義直は使用人達を寝室から出した。


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