君のそばにいたくて
「 キッチンとホールを見えるようにして
― だから、そこを ―― 」
嘉納さんが必死に説明してるのを
上の空で聞いている
( だってあの子筆記でしょ? )
昨日の言葉が胸を突き刺す。
トントン...トントン...
( なんの音だろ、ドアかな )
「 あ-、えっと亜嵐さん。
成瀬が呼んでる。 」
「 え?! あ、ごめんね、成瀬くん。 」
( ドアノックする音かと思った... )
「「 大丈夫?体調でも悪いの?? 」」
不安そうに首を傾げる
成瀬くんを横目に
「 少し休憩しようか、飲み物買ってくるよ 。 」
( 私がしっかりしないからか 。)
思い切り頬を叩こうとしたら、
グッと成瀬くんが
手首を掴んだ。
( どうしたんだろう 。 )
「「 なんで叩こうとしてるの、俺が聞くから話して。 」」
声が出ようとも君は
私を止めてくれるのは
高校時代から変わらないね。
そんな事を思いながら。
「 大丈夫、ちょっと寝不足なだけ。 」
そう嘘をついて
毎日君を心配させないようにしてたのに、
「「 高校から変わらないね、
亜嵐が嘘つくとき寝不足だって
いつもいってたもんね。 」」
君はどこまで優しいんだろう。
でもごめんね、この思いは
君には伝えられないんだ。
「 ごめんね 。 」
それだけを彼に伝えた。