好きだと言ってほしいから
「まさか!」

 私は大げさに首を振って否定した。結婚どころかこの先も彼の恋人でい続けられる自信すらないのに。

「なんだ、違うのかよ。焦ったじゃないか」

 ハッと笑った平岡くんはビールのジョッキを持ち上げるとそのままぐびぐびと一気に半分ほど飲んでしまった。泡が口元についても全然気にしていないみたい。

「まあ結婚はまだみたいだけど、麻衣ったらほんっと毎日ラブラブなのよ。しかも相手、誰だか知ってる?」

 意地悪に瞳を輝かせて葵ちゃんがもったいぶった言い方をする。

「俺たちが知ってる人なの?」

「そうよ」

「誰だよ、ソイツ」

「えっとね~」

「ちょっと……、葵ちゃん……」

 ニヤニヤと笑う葵ちゃんの袖を引っ張った。
 私の恋愛話なんか聞いてもおもしろくないでしょう? それにこんな話題の中心に自分が上がるのは何だか恥ずかしいし、気後れする。

 確かに私は逢坂さんと付き合っているけれど、二人の気持ちには縮まらない温度差があるということを葵ちゃんは知らないから。
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