好きだと言ってほしいから
 逢坂さんは本当に素敵だ。私が、誰もが憧れる彼の恋人でいられるのはいつまでだろうか……。

「逢坂先輩、ここどうぞ」

 葵ちゃんが気を利かせて席を空けてくれた。逢坂さんが「ありがとう」と言いながら私の隣に腰を下ろす。みんなが興味深そうに私と逢坂さんを見ている気がして、私は体を硬くした。

 そんな私を見ながら逢坂さんがまたいつもの溜息をつく。ああ、やっぱり迷惑だったに違いない。

「麻衣?」

「逢坂さん、どうして……」

 来てくれたの? 私の顔を覗き込む彼と目を合わせた。間近で見つめ合ってしまい、うろたえた私は慌てて視線を彷徨わせる。彼の前ではまるで落ち着きのない子供みたい。
 するとそんな私たちの間に明るい声が割って入った。

「逢坂先輩、ビールでいいですか? あ、それともメニュー見ます?」

 五島さんだ。テーブルの脇にあるメニューを取って逢坂さんへと差し出そうとする。けれど逢坂さんは片手でそれを制して言った。

「いや、俺はいいよ。車で来てるんだ。麻衣と同じウーロン茶をもらえるかな」

「えー! 逢坂先輩飲まないんですか?」

「うん、せっかくの席でごめんね」

 逢坂さんが飲めるのは知っている。家の冷蔵庫には常に缶ビールがストックしてあるから。大学時代もサークルの飲み会で顔色一つ変えずに飲んでいたことを思い出すと、きっと強いのだろうと思う。
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