好きだと言ってほしいから
「あ。そうだ。今日、平岡くんと駅前のいつもの店に飲みに行くから、麻衣もおいでよ」

 葵ちゃんが卵焼きに箸を突き刺しながら言った。

「平岡くん? ゼミの飲み会じゃなくて?」

「そそ。アイツ、夕方からこっちの客先を回るんだってさ。そのまま直帰するらしいから仕事終わる頃に迎えに来てくれるって言ってた」

「へぇ、そうなんだ」

「ね、行くでしょ? んで明日は休みだし、ウチに泊まってきなよ」

 しばし考える。お父さんの夕食は、今朝もちゃんと用意してきたから大丈夫。連絡だけ入れておけば何も問題ない。

「うん、行こっかな」

「じゃあ、平岡くんに麻衣も行くって連絡しとくね。仕事終わったら一緒に行こ」

「うん」

 私たちは手早くお昼を終えると、午後の仕事に取り掛かった。


 仕事が終わり、会社を出た私は国道沿いで平岡くんを待っていた。本当は葵ちゃんと一緒に行くはずだったけれど、どうやら仕事にミスがあったようで一時間ほど残業になったらしい。だから私だけ先に行くことになり、こうして一人で平岡くんの迎えを待っている。

 平岡くんからはあと五分くらいで着くとついさっきLINEが入った。
 まっすぐ続く大きな国道を眺めていると、白い営業車がハザードを出して目の前で停まった。サイドに大きく社名が入っている。私は思わず噴出した。平岡くんの会社の車だ。
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