好きだと言ってほしいから
「やだ、平岡くん、営業車で来ちゃったの?」

 助手席のドアを開けて乗り込みながら聞いた。

「おう。客先行った帰りだって松崎に聞いてねえの?」

「聞いたけど、まさかそのまま来るとは思わなかったよ。大丈夫なの? 営業車を勝手に乗り回したりして……」

 ちょっと不安になって訊ねると、平岡くんは「本当はダメなんだけどな。まあ、バレねーよ」と笑った。私もそんな彼に呆れながらもつられて笑う。

「さて、行くか。松崎は遅れてくるんだろ?」

「うん。一時間くらいで行けるって言ってたよ」

「そっか」

 平岡くんがハザードをウィンカーに変えて本線に合流しようとする。私も何となく彼と一緒に道路の安全確認をした。
 その時見慣れた白いSUV車が会社の私道に入って行くのが見えた。

「あっ……」

「ん?」

 私がつい声を出してしまったので平岡くんがこちらを振り向いた。

「どした?」

「あ、ううん。何でもない……」

「何でもないってこと、ないだろ。忘れ物か? 言ってみ?」
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