好きだと言ってほしいから
「俺、不安で……。麻衣に好きだって言われて、舞い上がってたんだ。君に幻滅されたくなかったから必死で……。でも、気づいたら君はいつも俺の隣で緊張してるし、二年付き合ってもそれは変わらないしで、俺といると君は疲れるんだろうな、って思ってた。だけどやっぱり俺は君を手放せなくて。そんなだったから俺の転勤が決まって、麻衣があっさり俺と別れようとしたときは、ああやっぱりな、って思ったんだ……」

「違います!」

 逢坂さんのシャツの胸元をギュッと握って私は顔を上げた。

「私こそ、逢坂さんは優しいから、後輩の私の告白を断れなかったのかも、って不安でした。逢坂さんの溜息を聞く度に、飽きられちゃったかな、って落ち込んで……。だけど私は諦められなくて、逢坂さんが優しいのに甘えてたんです。だからあの日、偶然、逢坂さんの異動の話を聞いてしまったときは、目の前が真っ暗になって……」

「麻衣……」

「逢坂さん、私とは結婚なんて考えてない、ってあの人に……言ってたから……」

 そう言ってしまってから、私は慌てた。これじゃあまるで結婚を迫ってるみたいじゃない。

「あ、あの、違うんです。いえ、そうなんですけど、そうじゃなくて……ええっと……あの、私……何て言うか……」

「麻衣」

 逢坂さんが、ゆっくり、優しい声で私の名前を呼んだ。たった二文字のその言葉に、特別な意味があるような響きを感じる。

「……は……い」
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