【完】俺が絶対、好きって言わせてみせるから。

いつのまにか正直にそんなこと言ってる。


半分ヤケクソだけど、でもちょっと楽しかった。


食事のマナーも、歯に青のりも、髪に匂いがつくとかも気にしないで好きなように食べる。


そういう外食もたまには、悪くない。



黒瀧くんの前では別に、いいところを見せようとか、みんなの憧れの有栖川さんでいなくちゃとか、そんなこと思わなくていいから。


ちょっとラクにいられる。


そういう意味ではこういう付き合いもアリなのかも。


だってあくまで友達だし。



いいところの御曹司で、みんなにチヤホヤされてるわりには意外にも庶民的で、飾らない彼。


そんな彼と共にする時間は、意外にも心地よかった。


なんだろう…。


ほんとに、変な人。


あ、調子に乗りそうだから絶対口にはしないけどね。


.


*

.


私たちはお腹いっぱいお好み焼きを食べて、制服から香ばしい匂いをただよわせながら電車で一緒に帰った。


黒瀧くんはちゃんと家まで送ってくれて。


初めてのデートは実に庶民的で、ロマンチックのかけらもなくて…

でも楽しかった。



自分の中に眠っていた、意外な自分を発見したような

そんな不思議な1日の出来事…。


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