Tell me !!〜課長と始める恋する時間
「僕には婚約者がいます。」
そんなに信仰心があるわけじゃないけれど、この時ばかりは思った。
お正月、家族で近所の神社に初詣に行った時、屋台で売ってるおでんやおしるこの事ばかり気になってお参りを適当に済ませちゃったからだろうか?
だから、今、バチが当たったのだろうか。
ぼんやりとそんな事を考えている自分に呆れてしまう。
「前にも話しましたが僕は愛人の子です。最終的に父方に引き取って貰いましたが、その父の会社の経営が今、あまり上手くいってません。」
手に持つ缶珈琲の温もりが少しずつ冷めていく。
「それで、前々より父の会社と取引のある経営者の娘と結婚する話が進められました。父の会社への援助を条件に。」
「援助?」
「ええ、婿養子です。つまり僕は父に売られ取引先の経営者に買われたのです。」
「そんな…」
そんな話が今時あるなんて…
「信じられないでしょうが、本当の事です。父の会社は弟が継ぎます。なので僕は父に取って単なる手駒でしかない。」
「だけど、課長の気持ちは?断ればいいじゃないですか。」
「僕もそう思います。けれど、父にはやはり育ててもらった恩があります。父により十分な教育と環境を与えて貰い今の僕があります。なので僕がその縁談を受けることで父を助けることが出来るならと承諾しました。」
「だったらどうして?どうして私と…」
付き合うなんて…言ったのよ。
本気にさせてって言ったのよ。
その言葉は心の中で呟く。