Tell me !!〜課長と始める恋する時間
熱々のたこ焼きをふうふうしながら食べる。


「美味しい。乾くん、ほんと何作っても美味しいね。」


「当然。」


と、胸張って言う乾くんに


「調子に乗んな。」


と、雉原さん。


やっぱり、息があってるよねぇ、この二人。


そもそも私と課長なんてお似合いでも何でもないもん。


一瞬しか見ていないけど、あの時、助手席に座ってた人、とても綺麗だった。


いかにも大人の女性って感じで課長ともお似合い…


胸が痛い…


やっぱり、課長の隣にいるべき人は私なんかじゃ駄目なんだ。


そう思うのに課長の手の温もりが忘れられない。


繋がれた手から感じる温もり。


頬にそっと触れる温もり。


抱きしめられた時に伝わる温もり。


そして、唇から伝わる温もり…


もう、忘れなきゃって、全部全部忘れなきゃって思うのに。


何もかも記憶している。


私、物覚え良いほうじゃないのに、こんな時だけ鮮明に覚えているなんて皮肉だよね。


やっぱり、あの日、課長に告白した時、潔く身を引いていればこんな思いしなくて良かったのに。


あの残業の日の事を思い出す。


課長が言った「本気にさせてよ」と言う言葉。


たくさんの事を抱えて生きてきた課長はあの時どんな思いでその言葉を言ったのだろうか。


私に何を求めようとしたのだろうか。


それともーーー


本当に単なる気まぐれだったのか。


愛の無い結婚前の思い出作り。


恋愛に期待しないと言った課長。


けれど私を好きだと言ってくれた課長。


あれは本当の気持ちだったのだろうか?


それともやはり、一時的なものだったのだろうか。


真実は分からない。


だけど、真実がどうであれ私が今更何を言ったって事態は何一つ変わらない。


もう遅いんだよね。


もう…なにもかも。








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