Tell me !!〜課長と始める恋する時間
「私、課長に伝えます。もう一度、ちゃんと私の言葉で課長の事が好きですって。」


もう涙は乾いている。


「そっか、じゃあ、もしかしたら課長も思い直してーー」


「いいの。」


乾くんの言葉を止める。


「いいんだ。私の気持ち、ちゃんと伝えることが出来たら私、」


そう、もう迷わない。


これでいいんだ。


「課長にきっちりお別れを告げる。」


そう、課長は課長で私が簡単に背負うことの出来ない事情がある。


きっと今も課長は苦しんでいる。


だったら、せめて私が課長を解放してあげなきゃ。


それが唯一残された私に出来る課長への愛のカタチだ。


「モモ、それで本当に良いの?あいつが他の誰かのものになっても。良いんだな?」


「はい。課長が誰を選ぼうとも私が課長を好きでいる気持ちは変わりません。正直いうと辛いけどいつかこれで良かったんだって思える日が来るかなって…」


「ふうん。そっか。分かった。モモがそれで良いって言うんなら私ももう何も言わない。」


「杏香さんまで本気?ねぇ、桃原さん、本当に良いんですか?課長の事。俺、そんなのおかしいって思う。」


乾くんが珍しく声を荒げて言う。その様子から心配してくれているんだってことが伝わってきて有り難い。


「ありがとう、乾くん。大丈夫だから。思い付きで言ってる訳じゃないから。」


「だけど、」


「純太、愛情のカタチは人の数だけあるんだよ。相手に求めたりぶつけたりばかりじゃなくて、時に引くこともその一つなんだよ。」


静かにそう言った雉原さん。


もしかしたら自分の事も重ねているのかもしれない。


きっと雉原さん、乾くんの事…。


だけど、雉原さんの胸の内にも様々な思いがあり、簡単には解決出来ない思いがあるのだろう。


雉原さんの言葉を聞いてそう思った。





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