Tell me !!〜課長と始める恋する時間
「ご迷惑をお掛けしてすいませんでした。」


出来るだけ小さく身を縮め頭を下げる。


「いえ、最終チェックをしていてたまたま見つけたので。」


もうこれ以上ここにいると色んな意味で心臓が持たなさそう。さっさとデスクに戻ろう。


「他にお話が無いようでしたら、私、先に戻りますね。」


この場の空気に耐えれなくてミーティングルームから先に出ようとすると、


「桃原さん、取り敢えず三ヶ月、どうぞよろしく。」


「えっ?」


課長に言われこちらも慌てて返す。


「こ、こちらこそ、ふつつか者ですがどうぞ宜しくお願いします。」


「確かにふつつか者ですね、君は。」


「課長っ。」


あっ、課長、今、少し笑った。普段、あまり笑わないからとても新鮮だ。それだけでテンションが上がっちゃう。その勢いで課長に言った。


「課長、先ずはクリスマス楽しみにしてくださいね。」


「クリスマス?」


「そうです、今月はクリスマスがあります。恋人たちの一大イベントの一つです。聖なる夜に愛を語り合ってぐぐぐぅーーーっと距離を縮めるのです。」


「そうですか。しかしながら毎年クリスマスはイエス・キリストの生誕を祝して家族で厳かに世界の平和に祈りを捧げないといけませんので。」


「課長っ。」


絶対、わざと言ってる。顔が半笑いだもん。


「今年は私と過ごしてください。世界平和、私も一緒に祈りますから。」


「なるほど。ならばそういう事で。」


完全に面白がられてる。これじゃぁ、先が思いやられるな。


だけどめげてはいられない。


「全力を上げて、私が素敵なクリスマスにしますから。課長、予定空けておいてくださいね。」


「了解しました。それに向けて仕事を調整しますが桃原さんも先程の様なポカミスはしないように。余分な時間を費やさねばならなくなりますので。」


「………あっ、はい、申し訳ありません。」


課長の冷ややかな一言に一気にテンションが下がる。


だけど仕方ないよね。


惚れた弱みだもん。


私がスノーマンの凍った心をきっと溶かしてみせるからっ。


人を好きになるって事が戯言じゃないって事、証明してみせる。


先ずはクリスマス、どんな風にしようかな。 


浮かれつつある心とは裏腹に私は課長に仰々しく頭を下げるとミーティングルームを後にした。





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