Tell me !!〜課長と始める恋する時間
***


「ただいまぁ。」


「お帰り。今日は車で送って貰わなかったのね。」


リビングに入るとお母さんが対面キッチン越しからにやけ顔で言う。


幸いにもお父さんはまだ帰っていないようだ。マサルも今日は確かバイトの日だったかな?


「これ、ご馳走さま。ありがとうね。」


お弁当箱を出して晩ご飯の支度をしているお母さんの隣に並んで2つのお弁当箱を洗い出す。


「へぇ、残さず食べたって事は好き嫌いが無いのねぇその人。」


「な、なに?そ、そ、その人って。」


「あんた、何をとぼけてるのよ。あんな苦し紛れの嘘、お母さんが見抜けないとでも思ってるの?」


さすが、母上、全部お見通しのようです。


「違うのよ。これにはちょっと訳があって、課長の食生活があまりにも乱れてるから。だからーーー」


「へぇ、課長なんだお相手。」


「だから、違うってお相手とかまだそんなんじゃないんだって。」


「へぇ、まだって事はこれからなのねぇ。今週の愛の稲妻と同じね。これから先どうなるか分からないってやつよね。ウフフ……」
 

駄目だ、人の話、全く聞いてないよね。しかもいつも見ているドラマと重ねちゃってるし。  


「そ、そうだ、明日も宜しくね。中身はまた私が詰めるから。」


「そう?あんた明日はちゃんと朝ご飯食べて行きなさいよ。朝しっかり食べないと尚更、頭ぼんやりしたままだからね。」


「分かってるって。あっ、後、卵焼き自分で作るから…。」


昼間、課長が言ってくれた言葉を思い出す。課長に食べてもらいたいと言う私の気持ちが伝わればなと思う。それに卵焼きくらいなら作れるし。


「フフっ、そうよねぇ、好きな男にお弁当渡すのに母親が全部作ってるんじゃねぇ。」


あー、もぉ、イチイチ面倒臭いなぁ。


まっ、これがうちの家族の良さでもあるから仕方ないか。こんなだから毎日賑やかに楽しく過ごせるんだもんね。




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