Tell me !!〜課長と始める恋する時間
次の朝から何とかおにぎりと卵焼きは自分で作って詰めるようにした。


26にもなって料理が全く出来ない訳じゃないけど、久しぶりだから中々上手くいかない。


「どうぞ。」


昨日と同じく人の来ない第三会議室にて課長と待ち合わせ、お弁当を差し出す。


お弁当の蓋を開けた時、一瞬、課長がフリーズした気がしたけど気にしない事にする。


やっぱり卵焼きは私が作ったってバレたかな。


形がぐちゃぐちゃだもんね。


まぁ、味は悪く無いと思うんだけど……それでも課長は何も言わず食べてくれたのでホッとした。


まぁ、ある意味、何も言えない味なのかもしれないけど。


心配していた乾くんは特にあれから何も突っ込んでくる事はなかった。


お昼になれば課長も私も別々に会議室に来て、そこで課長の分のお弁当を出してるから誰かに怪しまれることもない。今のところだけどね。


こうしてあっという間に迎えた金曜日。


少しは卵焼き上達したかなぁなんて思いながらお弁当を突っつき食べる。


さて、この週末をどうしようか。


だってさ、結局、デートってしてないもん。先週は仕事で、終わってから牛丼食べて帰宅と言う何とも微妙な感じで終わったし。


いくらお昼こうして一緒に食べているとは言え、大した話ってしないんだよねぇ。


距離を縮めるのに貴重な時間なんだけどな。


だって食べてる時、課長、何も話さないんだもん。話し掛けても行儀が悪いって叱られるし。


まるで社食で食べててたまたま相席になったような感じに似てる。


横並びに座りただ黙々と食べる。若干、この状況に喉が詰まりそうになるけれど煩くして嫌われたくないし。
 

あーあ、このままだとこの週末の約束は無理だな。


いや、しっかりするのよっ。


残された時間は二ヶ月と二週間。悠長な事は言ってられない。今月末にはクリスマス、それから年末年始に、年が明けたらバレンタインだってあるし。ただボケッと日々を過ごすわけにはいかないんだから。


このまま相席状態で終わる訳にはいかないもんっ。


「課長っ。」


「なんです、桃原さん。何度も言うようですが口に食べ物をいっぱい入れて話すのは止めなさい。」


「ぅん。すすすいません。」


急いで噛んでゴクリと飲み込む。


「この週末の予定はどうなってるんですか?」


「週末ですか?特に予定はありませんが、何か?」


何かってこの状況で聞けばデートの約束に決まってんでしょっ!


なんて強く言えるわけもなく……。   





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