Tell me !!〜課長と始める恋する時間
朝のラッシュ程ではないものの、買い物を終え家路に着く人、これからまたどこかに向かう人とでそこそこ電車内は混み合っている。


どこかに掴まって立ちたいけれど私達の位置に近い吊り革は既に他の人が掴んでしまってる。


仕方ないか。混んでるもんね。幸い課長に手を繋いで貰ってるし大丈夫だよね?


にしても今日はよく手を繋いで貰えるな。


幸せを噛み締めているとドアが閉まり電車が直ぐに動き出す。


すると大きく揺れ完全に足元に力を入れてなかった私はバランスを崩した。


と同時に課長に大きくぶつかる。


「うわっ、ごめんなさい。」


しかも足も踏んでしまった。ヒールで。


課長を見るとーーー


目、怖いって。


「申し訳ありません……」


課長って靴いつだって綺麗に手入れしてるもんねぇ。それをむぎゅっと踏んだらこんな風に睨まれますよねぇ…。


すると、課長が繋いでた手をすっと離した。


えっ、怒っちゃった?


そんなぁ。


確かに私の不注意だけど。


課長は小さく溜息を一つ吐くと、


「危なっかしい人だ。これ、申し訳ないけど持って貰えますか。」


そう言うと私に手土産の入った手提げ袋を押し付けてくる。


そして吊り革のぶら下がる鉄の棒の部分を余裕で掴むと反対の手は私の肩を抱き寄せた。
 

ひゃぁっ。


声を上げそうになるのを何とか堪える。


「着くまでこれで我慢してください。」


無理……


我慢とか無理……


恥ずかしすぎて、


好きぃって叫んでまうやろーーーーっ。


て言うか…


課長がほんのりつけている優しい香りに鼻を擽られてやたらドキドキする。


肩に課長の腕の温もりを感じて既に心臓がオーバーヒート寸前。


私、無理かも。


こんなにも密着してて、駅に着くまで身が持たないかも。


このまま心臓が止まるかもしれない。


お父さん、お母さん、先立つ娘をーーー















「もうすぐ着きますね。」


快速かいっ。


早いわっ。


もうちょっと余韻に浸らせて。


課長の腕を完全に形状記憶するまであと少し、時間をくださいましぃ。



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