生徒だけど寮母やります!2
「…………え……」
咲夜の頭の中は、真っ白になった
「そう……ま……?」
隣でそう呟く市河の声尾も耳に入らず
彼は久しぶりに他人の口から聞いた彼の名前を、頭の中で反芻した
「……そんな意味分かんない情報、正確性あるのかよ」
その呟きに、女子生徒は頷く
「伊吹グループが防犯カメラから割り出して、侵入者複数名の顔をホームページにアップしたの」
そう言うと、彼女はスマートフォンの画像を彼らに見せる
画質は悪いものの、確かにその中の一人は限りなく爽馬に似ていて……
いや、どう考えても
爽馬本人だった
あのころと変わらないポーカーフェイスと
冷たすぎて
心配になるほどの色のない瞳
「相当怒ってるんじゃねーの伊吹グループ。未成年の顔をホームページにアップするなんて。かなりひどいデジタルタトゥーだよ」
「てか、警察は伊吹グループがホームページに顔をアップしても何も言わないの?」
市河はそんな一人の女子の疑問に、疑問を投げかけた
「てか、これ警察は動くのか?」
「なんで?小高くんがそんなことしたなんて思いたくないけど、不法侵入でしょ?」
市河は何か考えたような顔をしてから、ふるふると首を振る
「やめだこの話は、文化祭の準備が進まないし」
「でも……」
「そうよ、私たち何もできないし。文化祭の準備しないと間に合わないじゃない」
咲夜はこの状況によくわからない顔をしている弥隼と千冬に向き直ると
「ごめんな巻き込んだりして。クラスに帰って、先輩に引き留められて遅くなったって言っといて」
と謝った
無理して笑っているのが痛いくらいに分かって
2人は何も言えず「……いえ」と首を振って、自分たちのクラスへと帰って行った