生徒だけど寮母やります!2
爽馬.....
声に出したら目の前の彼は、幻覚だったように消えてしまう気がして
景は呼吸の乱れを感じながら彼をただじっと見つめていた
彼女の横に立つ結斗も、ライも咲夜も市河もただただ驚いて爽馬を見つめていた
あれだけ会いたいと願った爽馬がそこにいる
しかし
去年、一緒に笑いあったはずの彼の表情は、氷のように冷たかった
確かに彼は常に無表情で、氷の人形だなんて例えられていたけれど
こんなに.....
恐ろしいほど冷たくなかった.....
最初に言葉を発したのは、咲夜だった
「爽馬.....だな?」
彼の問いかけに、爽馬は答えない
ただ僅かに反応して身構えると、サッと狐の姿に変化(へんげ)して、ものすごいスピードで地を蹴って上へと飛んだ
そしてまた
景を狙い、彼女めがけて炎の矢を放ったのだ
ジュッッッ.....!
今回の結斗の反応は速かった
私を狙ってる.....!?
景がそう思う頃には、彼は彼女を抱えて背後の大木の太い枝へと乗り移っていた
バチッバリバリッ.....!
それと同時に、ライが爽馬めがけて電流を放つ
市河は一旦木綿姿の咲夜に載ると、空中を飛んで枝に乗ったままの景と結斗の横へと移動した
「.....景ちゃん、咲夜、いっちー。もうあれこれ言ってる暇はない。爽馬は景ちゃんを狙う敵だ。爽馬を倒すしか、俺たちがここから帰れる方法はない」
そんなのは嫌だ
なんて事を言っている場合ではないくらい、景の身には危険が迫っていて
自分たちが求める爽馬はもう存在しないのだと
そう納得しなければとてもではないが爽馬と戦う事などできないと、景は手を握りしめて頷いた
こんな悲しい結末があるはずないと
そう思えば思うほど目の前の光景に体が震える
しかし景は、狐姿の爽馬を目でしっかりと捕らえ、そして睨み返した
「爽馬を撒こう。多少傷つけるかもしれないけど、そうしないと私たちが無傷で帰れない。もし私たちが怪我をすれば、小高家突撃隊まで規制されたり咎められることになる。それだけは、それだけは避けたいよ」
その言葉を聞いた一旦木綿姿の咲夜に乗る市河は「そうだな」と頷く
彼らは爽馬から少し離れた地面に着地すると、爽馬の攻撃をうまくかわしながら電流を放っていたライと合流した
並ぶ5人と対立する、一匹の狐
こんな光景は見たくなかった
見たくなかったよ.....爽馬.....
目から涙がこぼれそうになるのをグッとこらえ、景は前を見据える
私は、結斗、ライ、咲夜、日向と、みんな無傷で寮に帰らなくちゃいけないんだ.....!
そしてキッと前方を睨むと威勢のいい声で叫んだ
「戦え!!」
その合図で
起こってはならなかったはずの最悪の戦いが、始まってしまった