生徒だけど寮母やります!2
「ただいま.....みんな」
景が苦笑いしながら言った挨拶にかぶせ、マナはガタリと椅子から立ち上がった
「笠上さん.....!どうしたのそれ!」
ソファまで景を運ぶと、そっと彼女を降ろすライに代わって答えたのは結斗だった
「実は爽馬にやられたんです。なぜか小高家に着く前に、その途中の道で対峙する形になって戦いました」
「小高くんに!?」
千加、千冬、満宵は予想通り出てきた『爽馬』の名を聞いてピクリと反応した
「それで.....俺ら最後の最後に油断して、景を守れなくてさ。結局、爽馬は消えたし」
続けて咲夜がしんみりとそう呟く
そんな彼らに景はソファ越しに顔を覗かせると
「でも、包帯が紅いから大怪我したように見えるかもしれないけど、そんなことなくて、血は全然とまってるし。ライがお姫様抱っこしてくれたのだって、みんなが心配しすぎるからなんだよ。..........心配かけてごめんね。ごめんなさい、斎藤先生」
そう謝った
そんな彼女の元に市河が包帯と消毒を持ってくる
「景、勝手に寮母の部屋入って消毒持って来ちゃった。包帯取り替えようか」
「ありがとう日向」
本当は足も心も痛いはずなのに、景はなんでもないような顔で傷を見つめている
市河も、怪我をした景の前では明るく振舞おうとしているのか
「ちょっと我慢な」
と言って微笑んでいた
そんな光景に、満宵が耐えきれなくなったようにガタリと椅子から立ち上がった
その音に驚いて
そしてその音を立てたのが満宵だったことに驚いて、全員がそちらを向く
満宵は唇を少し震わせながら、ルークの目を見て言った
「ねぇルーク、僕聞いたんだよ。盗み聞きみたいになったことは申し訳ないけど、君が『爽馬』って人と電話してるのを。それで、小高家に向かう景ちゃんたちを阻止するように指示してるのを」
「「..........!!」」
景の包帯を交換していた市河の手が止まり、景と市河は顔を見合わせた
「今.....何て.....」
結斗、ライ、咲夜も言葉を失ってルークを見る
マナと弥隼もこの急展開に頭を混乱させながら、絶句しているようだった
ルークは表情を変えず
「なるほど」
と呟く
「ルーク。今のままじゃ、僕、君のこと何も分からない。
だって、もし君が小高爽馬に電話して教えなければ、景ちゃんは怪我しなかった。
でもまだ、同じ魔術科の、同じ寮の友達だと思ってるし、これからもそうであって欲しい。お願い.....弁解して。どういうことなのか」
満宵の言葉に対し、ルークは暫く俯いて黙ったままだった
そのわずかな時間は
途方もなく長かった
そして、彼は顔をあげると、景を見つめてこう言った
「今まで小高爽馬がしたこと、何もかも。.....それは..........全部君のためだった、景」
その言葉に、全員が息を飲んだ
「もちろん、俺がここにいるのも君のためだよ。でも、こんな話.....急に言われても困るデショ。信じるかどうかは任せるよ」