生徒だけど寮母やります!2
『ただ.....あなたが一度電話をかけてきたら、僕はこのケータイを破棄します』
その言葉に、ルークは彼の考えを瞬時に理解する
彼は、笠上景と自分を繋ぐものすべてを許さないのだ
先ほどの彼の言葉
《片思い.....ですか.....》
《だとしたら.....それは一生続く片思いですね》
この言葉がどういう意味を含むのかを、今この瞬間に良く理解し
この少年の希望と絶望が混じり合う依頼を受けることが、今自分がこの人のためにできることなのだと強く感じた
自分の言葉に対して続けようとしないルークに、小高爽馬が付け足す
『.....景や寮の人たちは鋭い人たちです。もしかしたら、色々バレるのも時間の問題かもしれない。
そしてとても優しい彼らは、もしかしたら僕のために考えてくれるかもしれない。会いたがってくれるかもしれない。それを、全て排除することがもう一つ、あなたに頼みたいことです』
ルークは励ましの言葉を言うのも違う気がして、ただ「わかりました」と言った
色々思うところはあるが、彼の望み通りに行動しよう
それがきっと、勇気を出して依頼してくれた小高爽馬のために出来ることだ
「あ、もうひとつ聞きたいことがありマス」
電話を切られてしまう前にと、急いで言ったルークに、小高爽馬は相変わらず「はい」と冷静に答える
「どうして、MagicAssociationJapanに依頼するのではなく、アメリカなんて遠い国の本部に依頼したんですカ」
その質問に、返答はしばらく返ってこなかった
これにすら答えられないのかと思うと、なんともやりきれない
小高爽馬は、質問の答えになっているとは言えないが
『あなたが.....こうして真剣に相手をして答えてくれたので、MAの本部に依頼して良かったです。ありがとうございます』
とルークに対する感謝を述べた
これが、多分彼の限度なのだ
感謝の言葉を噛み締めながら、ルークは初めて顔に微笑みを浮かべた
「では、あとは任せてください」
『はい。景を.....よろしくお願いします』
こうして小高爽馬とルークはお互いに電話を切った
日本か.....
自分にその国の血が入っているとは言え初めて行く国だ
小高爽馬は
とても、儚い人だった
次に彼と電話で話すときはいつ来るのだろうかと、ルークはケータイを見つめた