生徒だけど寮母やります!2
時間帯がちょうど人々の帰宅と重なり、電車内はそれなりに混雑していた
座席に1人や2人座れる空きはチラホラあるものの、9人はさすがに座れなさそうだ
「寮母さんは座りましょう」
「あー、だな」
景の怪我を考慮した弥隼の提案に、市河が頷く
「結斗、降りる駅が近くなったら教えてね」
「了解、景ちゃん」
こうして自然と各自が散らばり、景は弥隼と咲夜に挟まれる形で座席に腰を下ろすことになった
「わー、なんか視線感じるなぁ」
「そりゃあ足怪我しておんぶされてる子なんかそうそうおらへんやろうからなぁ、よっと」
「だよね.....。ありがとう、弥隼くん」
弥隼に座席に降ろされた景は手を合わせてお礼をすると、先ほどから横で真剣な顔つきでスマホ画面を見ている咲夜を見上げた
「咲夜も座ったら?」
「う、うん.....」
そして、ハァと短く息を吐きながら腰を下ろす咲夜
弥隼も景越しに咲夜を覗き込むと
「何見てたんですか」
と尋ねた
「うん.....」
咲夜が見ていたのは、去年同じクラスだった男子生徒、佐原からの新着メッセージだった
「さっき、さは.....」
咲夜は名前を言いかけて、去年の体育祭での出来事を思い出す
『こいつさ、あの寮母さんが好きなんだってー』
『おい、やめろよ!見かけたことしかないから別に話したわけじゃ』
あー.....確か佐原は、景のことが好きなんだったかな.....
今もかどうかは知らないけど.....
「いや.....」
「ん?」
咲夜は景に怪訝な顔で見られ
「さ、佐原って奴からのメッセージなんだけど.....う.....」
そう言ってからパッと口を押さえて
目を潤ませた
「..........佐原くんって人のことは、よく知らないけど.....感動的なメッセージを送る方なのかな。咲夜はその人のことが好きなんだね」
咲夜は口を押さえたまま前かがみになって首を振る
.....それってつまり
俺→佐原→景
って三角関係じゃねぇかなんだそれ
あと佐原ァ、景お前のこと知らなかったぞ!!!どんまい!!!
「なんやねん」
1人何かに葛藤する咲夜に景と弥隼は多少引きながら、顔を見合わせた