生徒だけど寮母やります!2
「じゃあ荷解き、ごゆっくりね」
ハナは相変わらず笑顔で片手を挙げると、颯爽と去っていった
その後ろ姿を見送ってから、部屋の戸を開ける
新しい客人を待っていたかのような何もない綺麗な畳の部屋が、その畳の匂いと共に自分を迎え入れた
木の空っぽの本棚と机
花の入っていない滑らかな白い花瓶
壁掛け鏡と、置き時計
それと小さなテレビ以外は何もない
荷物を放り投げるように置き、部屋の奥まで行く
畳に膝をついて外気で冷たくなった窓ガラスに触れると、窓は結露していた
濡れた指先を拭かないまま、窓の鍵を上に押す
窪みに手をかけて窓を引くと、外の冷たい空気が一気に顔をすり抜けて部屋の中へと入ってきた
滑らかで柔らかい彼の髪がなびいて頬を掠める
長い睫毛を震わせて、遠くの景色を見据えた
外に広がる景色は、永遠と続く山の緑
この寒い二月
落葉せずに青々と聳え立っている常緑樹が逞しくて
静かに涙が落ちた